これは実話である。

先日、定期清掃を毎月行っているクリニック様に電話連絡し、これから鍵を取りに行きますと伝えた。

一時間後、鍵を取りに行くと看護婦さんが「先ほど来た方に、渡しましたよ。」と言われた。

なんと!!!そんな話は聞いたこともない。私が電話してから、ここに来るまで誰にも会っていない。なぜ鍵の事を知っている人物がいるのか?

他に清掃会社などと契約しておらず、調べてみると他の階のクリニックと間違えて業者が来た可能性もない。

看護婦さんも、「普段はあなたが取りに来るのに、今日に限っておかしいなとは思いましたが、お電話頂いていたのでなんの疑いもなく、渡しました。」との事。

しかも、「明日の掃除で、鍵を取りに来ました。」と言われたらしい。

私は考えた。これはおそらく、クリニックに恨みを持つ者が、明日、誰もいない院内をめちゃくちゃにしようとしているに違いないと。

まず、看護婦さんにセコムに連絡して、明日の休診日は絶対にだれが鍵を開けても調査してもらうようにしておいてくださいと伝えた。これで一応一安心だ。

しかしいったい誰が?

その時、私はこのクリニックの少し暗い感じの受付の青年の事を思い出した。今日はどうやら休みなのか?

「あの、○○○○さんは今日はお休みですか?」

「実は○○○○さんは、先月いっぱいでやめたのです。」

やはりそうか!!!!そうだ、あいつに違いない。間違いない。きっとなにかへまでもやらかして、首になったのだろう。間違いない。私の長い人生で培った人生観、推理力、それは人間の域をはるかに超えているのだ。さすがだ、さすがに私はすごい人間だとあらためて自分で気が付いた。

もう少し、いろいろ調べてみますという事で、休診時間の午後1時にもう一度クリニックに行くことにした。ちょうどお昼時間だったので、昼食をとりながら、頭はフル回転だ。

あいつだ。あいつに違いない。今日のうちに警察に行った方がよいだろうか?いや、大丈夫だ。セコムには連絡している。おそらく友達を利用して鍵を受け取り、明日、クリニックから金目のものを奪うつもりだったのだろう。

しかし私という人間がかかわっていたのがお前の命取りだったのだ。私のように世の中の荒波を泳いできた人間は絶対に騙されないぞ。真実は一つだ!!

午後1時になり、クリニックに向かった。

「犯人はあいつです。」なんだか少しこれを言うのが気が重かった。

先月までは仲間だった人間には違いないのだ。その人間が犯罪を犯そうとしている事を告げるのは少し心が痛んだ。

クリニックには先生と看護婦さんが待っていた。

私は口を開いた。

「あの、非常に言いにくい事なのですが、犯人は間違いなく、、、、」

その時、看護婦さんが言った。

「す・み・ま・せ~ん。なんか~、大先生が自宅から蛍光灯の修理をなじみの電気屋さんに依頼してたみたいなんです~。こんな偶然もあるんですね~。お騒がせしました~。」

どうやら、「明日の工事のために」を「明日の掃除のために」に聞き間違えたようである。。。。。。

おしまい。

追伸

○○○○さんは、病気のお母さんの看病のために、田舎に帰ったらしい。
とっても良い人との事でございました。まことに申し訳ございませんでした。m(_ _)m